2025年7月10日木曜日

太田記念美術館「鰭崎英朋」10

英朋の才能を燃え立たせたのは、泉鏡花の華麗な文筆が創り出した幻想的世界だったでしょう。また落款の「芳桐印」に象徴されるように、歌川派の系譜に連なる絵師としての自負と矜持もあったでしょう。さらに僕は、ラファエル前派を先導したジョン・エヴァレット・ミレイの傑作「オフェリア」(1852年)を、英朋が写真や図版を通して知っていた可能性も考えてみたいのです。

しかし清方が「鳥合会の後公開の会への出品がない」と書いているように、英朋は口絵や挿絵の小さいけれど濃密な絵画空間にみずからの創造世界を限定して、近代が生み出した人工的装置である展覧会への出品にはきわめて冷淡でした。川端龍子の言葉を借りれば、「会場芸術」を嫌ったのです。


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  余美術史學なる學問を専攻せり。就中我國の近世繪畫を専門分野とす。仍 て 小島烏水氏の名著『浮世繪と風景畫』『江戸末期の浮世繪』等は大學時代より親炙せり。之を一讀、氏の豊饒なる美的感性に駭目せざる者、孰れにか在らん。巨いなる直感の羽翼を以て、錯綜せる浮世繪の峯嶺上を悠々と飛翔せ...