富士の裾野における曽我兄弟敵討ちを主題とする『曽我物語』の後日談ともいうべき内容です。これまた一種の復讐譚ですが、ここに登場するのが十郎に愛された大磯の遊女・虎御前と、五郎に思いをかけられた化粧坂けわいざかの遊女・少将です。その化粧坂から曽我の里へ至る二人の道行きが、この画題のもとになっているのです。
「世継曽我」のテキストには絵入り本があり、そのなかに道行の場面があります。とくに興味深いのは、早稲田大学図書館所蔵の山本九兵衛版『世継曽我』で、今や早大オープンデータベース(WINE)に全巻公開されています。じつに便利な世の中になったものです――旧世代の研究者には怒られてしまうかもしれませんが( ´艸`) 長春は先行する絵画作品とともに、この挿絵を参考にしたにちがいありません。

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