大覚寺の前身である嵯峨離宮――嵯峨院を建てられた嵯峨天皇は、空海弘法大師、橘逸勢とともに平安の三筆として有名です。それのみならず、嵯峨天皇は平安前期における唐文化興隆のリーダーでした。その一環が、漢詩愛好だったのでしょう。
この時代の漢詩は、小島憲之編『王朝漢詩集』<岩波文庫>によって知るだけですが、本書には嵯峨天皇の漢詩が12首も採られています。その作者小伝をみると、「詩100余首が『凌雲集』『文華秀麗集』『経国集』などに残り、平安初期(弘仁・天長期)屈指の詩人」とたたえられています。このなかから3首ばかりをマイ戯訳で紹介することにしましょう。
嵯峨天皇「江辺の草」
淀川べりの春の日に 見るべきものはなんですか?
若き貴公子思わせる 青々とした春草だ
光や風は暖かく 草の香りもフレッシュだ
新生する草――年毎に 見る人だけが老いてゆく
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