2023年5月11日木曜日

静嘉堂@丸の内「明治美術狂想曲」19

 

いや、昭和9年前後といえば、清輝のころよりかえって西洋文化に対する忌避感が強まっていたかもしれません。この年、三上参次は中等学校における英語授業時間の削減を主張しています。あるいは、描いたのが女子学生だったからなのでしょうか。いずれにせよ、黒田清輝「裸体婦人像」腰巻き事件と通底する感覚がうかがわれるじゃ~ありませんか。

毬子さんが大人向け雑誌の挿絵から、子ども向け雑誌の挿絵に転向したことも、その背景はチョット似ているように感じられます。大人向け雑誌の挿絵では、官能的なシーンもあったわけですが、お母さんがこれを大変嫌がりまたお怒りになったため、毬子さんは子ども向け雑誌の挿絵に活躍の場を移したというのです。

大人向けの小説に男女情愛の描写があることは当然であり、おそらく今見れば何ということのない挿絵だったのでしょうが、サタさんは自分の娘が描くことに、母として我慢できなかったのでしょう。これが息子なら、どうということもなかったのでしょうが……()

 


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