2023年2月27日月曜日

『美術商・林忠正の軌跡』11

 

ここでベルツ先生に異を唱えるようで申し訳ないのですが、その美しい果実を毎日食べていると、やがて味覚自体も変化するのではないでしょうか。いくら日本・日本と声高に叫び、日本精神を堅持せよと主張している国粋主義者でも、毎日洋式に腰掛けていれば、やがて思想も欧米化するというのが持論なんです() 

10年ほどまえ「週刊 世界と日本」という週刊紙に、この持論を発表したことがあるんです。「和式トイレは日本文化の誇り」というタイトルがつけられちゃっていましたが、僕の趣旨はむしろ洋式によって思想も欧米化するという点にあったのです。

一応「機能的には洋式に軍配だが……」という副題は加えられていましたが、形式が内容や思想を規定することは、しばしば見られることではないでしょうか。いや、型の文化といわれることもある日本文化こそ、その典型かもしれません。


0 件のコメント:

コメントを投稿

東京美術『日本視覚文化用語辞典』3

  前回、東京国立博物館の特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」を紹介しましたが、実をいうと後期高齢者の僕には「コンテンツ」の意味がよく飲み込めませんでした。しかしこの辞典にはチャンと「コンテンツ」という項目があって、簡にして要を得た説明がなされています。しかも「マーシ...