阿国歌舞伎や遊女歌舞伎や若衆歌舞伎の残り香なのでしょうか、歌舞伎においてエロティシズムはきわめて重要な要素です。江戸時代、遊里と芝居が二大悪所とされた事実が、それを物語っています。またそれは、女形という倒錯した役柄に象徴されています。しかし「めぐり会いは再び」にも「グラン カンタンテ」にもエロティシズムは存在しませんでした。少なくとも饒舌館長には、まったく感じられませんでした。
もちろん、礼真琴は倒錯した役柄を演じる男役です。しかし健康そのもの、好色性の香りをそこに嗅ぎつけることは不可能でした。舞空瞳は「めぐり会いは再び」で素晴らしい脚線美を見せてくれましたし、「グラン カンタンテ」ではハイレグカットの衣装でも登場しました。
また前者ではルーチェとアンジェリークの一瞬のキスシーンもありましたし、後者ではあの有名なフレンチカンカンのようなラインダンスがありました。しかしそれらはセクシーであり女性美ではあっても、歌舞伎に感じられるエロティシズムではありませんでした。
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