静嘉堂文庫美術館には重文に指定されて有名な「四条河原遊楽図屏風」があります。その左隻には遊女歌舞伎の総踊りが描かれています。そこに横溢していたにちがいないエロティシズムが、「グラン カンタンテ」には爪の垢ほどもありませんでした。
逸翁はあれほど強い影響を歌舞伎から受けたにもかかわらず――たとえ知らず知らずのうちにではあったとしても――歌舞伎のエロティシズムだけは、意識的に排除したのではないでしょうか。
それは宝塚新温泉で老若男女だれでもが楽しめる国民劇に不必要な要素、いや、むしろ百害あって一利なき要素だったからでしょう。
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