2022年6月12日日曜日

サントリー美術館「北斎」4

 

痘瘡とは疱瘡、つまり天然痘のことです。ご存知のように、痘瘡はジェンナーにより牛痘種痘法が発明されて、1980WHOにより絶滅宣言が出されましたが、江戸時代にはとても恐れられていました。

死亡率が高いことはもちろんですが、あとに痘痕(あばた)を残すことも理由だったのでしょう。「痘神いてがみに惚れられ娘値が下がり」という川柳に、それはよく現われています。

「弘法大師修法図」はこの流行を機に、疱瘡退散祈願として描かれた作品ではないのでしょうか。弘化3年とすれば、北斎は没する3年前、87歳です。もっとも、天保7年には麻疹ましん(はしか)が流行っていますので、これと関係する可能性もありますが……。

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