葛飾北斎の弟子として活躍した浮世絵師・菱川宗理の彩管になるこの「娘に猿図」は、肉筆浮世絵の蒐集に情熱を傾けた氏家武雄氏のコレクションを代表する優品として、古くから高く評価されてきました。間もなく出る『國華』1513号に、饒舌館長が改めてこれを紹介することになりました。
葛飾北斎は一時期、初代俵屋宗理の跡を継いで「宗理」を名乗り、いわゆる宗理型美人に健筆を揮います。たとえば寛政9年(1797)に出版された狂歌絵本『柳の絲』は、かの「冨嶽三十六景」<神奈川沖浪裏>のプロトタイプを示す「江嶋春望」を含むことでよく知られますが、この落款も「北斎宗理画」となっています。しかし北斎は、寛政10年(1798)冬のころこの号を門人の宗二に譲ってしまいます。これすなわち菱川宗理です。
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