2021年4月20日火曜日

国立能楽堂「能楽と日本美術」4

この歌を現代語に意訳すれば、「きみのカンバセが簾を通してほのかに見えなかったわけではなく、かといって、ちゃんと見えたわけでもありませんが、その瞬間からきみが好きになって、恋しくてたまらず、ぼんやりと物思いにふけっているうちに、わけもなく今日一日が過ぎてしまうことでしょう」となるかな? 

じつにロマンティックな相聞歌ですね。あるいは、チラッと見ただけで、一目ぼれしてしまった面食い男・業平の本領躍如たる一首で、こんなことで恋に落ちるとあとで後悔しますよという、反面歌ともいえるかな()

さて、女は紅梅殿、老松、一夜松など近くの名所を教えたあと、自分は桜葉の神であると告げ、月の夜、神楽を待つようにといって花の陰に姿を消します――つまりこれが中入りで、続いてアイが登場して中入り場となります。

 

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