2021年4月19日月曜日

国立能楽堂「能楽と日本美術」3

しかし工芸の優品もたくさん出品することになったので、漆工から3点を番外としてリストアップすることにしましたが、そのうちの1点がこの小鼓胴なんです。この桜に車という主題は、「熊野・松風に米の飯」といわれるほど人口に膾炙する三番目物「熊野」に取材するものではないかといわれてきたそうです。しかし、世阿弥原作といわれる脇能物「右近」のイメージに近いというのが私見です。

鹿島の神職が、北野天満宮の南にある右近の馬場へ桜見物にやってきます。そこへ花見車に乗った女(前シテ)が侍女を連れて現われ、女と神職は、「見ずもあらず見もせぬ人の恋しくはあやなくけふや眺め暮らさん」という『伊勢物語』に出る業平の歌をめぐって言葉を交わすうちに、心が通じ合います。

 

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