2021年2月17日水曜日

『國華』蕪村拙稿4

 

 それまで巻頭のタイトルは、服部南郭が親しくしていた詩僧・万庵原資の『江陵詩集』から「夜色楼台」と「雪万家」を採って寄せ集めたものとされてきました。しかし「夜色楼台雪万家」という詩句がそのまま李攀龍にあるとすれば、蕪村はこれによったと考える方が自然でしょう。

ところで、静嘉堂文庫には『七才子詩集』という小型本が所蔵されており、元文元年(1736)の年記があります。ここで注目されるのは、序文の筆者が服部南郭と万庵原資という点です。この事実を考えれば、蕪村が李攀龍の詩に触れて霊感を得たのは、『七才詩集註解』ではなく、じつは『七才子詩集』だったと推定されるのです。

蕪村が北京を舞台とする李攀龍の詩によったとなれば、まず蕪村がイメージしたのは北京だったことになります。そう思って「夜色楼台図」をながめると、もうこれは完全に中国の街並みですが、李攀龍の詩を考えれば当然のことでした。

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