公演に先立って、今日の「安達原」で前ジテがつける面は、静嘉堂文庫美術館所蔵の「曲女」であるという案内があり、「能をめぐる美の世界」展の宣伝(!?)までして下さいました。
これを着けて観世さんが舞うと一段と白く輝いて見え、本来能面というものは、このように使われるべきものなのだと、心の高まりを抑えることができませんでした。もちろん美術館には、コレクションをできるだけよい状態で次の世代に引き継ぐという大切な使命がありますから、すべての作品を実際に使用するということは出来ません。
しかし許される範囲で、本来の目的に添わせてあげることは、私たちの生活を豊かにするとともに、その作品にとっても幸せなことだと思います。生活と美術が混然一体となった日本文化の伝統を、現代によみがえらせる、もっとも確かな道にほかなりません。
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