それは9月2日の国立能楽堂ショーケース公演でした。名曲「安達原[あだちがはら]」で、観世九皐会の観世喜正さんがシテとして女を演じ、我らが「曲女」を着けて舞ってくださったのです。これには能面研究の権威で國華賞を受賞された田邉三郎助さんのお勧めがあったことも、ぜひ書き添えておきたいと思います。
この「曲女」は増阿弥の作と伝えられてきました。増阿弥とは、ある個人を指すのではなく、近世の能面作家の間で伝承されてきた古い時代――おおむね室町時代の作を格付けしたものと言ったほうが正しいでしょう。
ですからこの作品も、田邉さんによれば、江戸時代中期の作と推定されるそうですが、素晴らしい出来映えの一面で、保存も完璧です。
0 件のコメント:
コメントを投稿