2020年3月27日金曜日

荒井健・田口一郎『荻生徂徠全詩』5


 
更にまた河辺の樹木輝いて 繚乱として花びらは散る
 昔聞く月に生えるという桂 大内裏へと移植されたと
 縹渺と仙界の花風に散り 音一つなく流れに落ちる
 漢水の女神が絹の靴下を はいて波上を歩むに似たり
 鄭交甫女神の帯び玉いただいた 直径一寸輝く光彩
 胸痛む岸辺の鶏[とり]の鳴き声に…… 交甫なんかじゃないこの俺は
 川の月見えなくなったし岸の花 いつも咲いてるわけでもないさ
 変らずにみなぎる川の水だけが 岸辺の街をめぐり流れる

0 件のコメント:

コメントを投稿

サントリー美術館「NEGORO」10

    これまで知られてきた『紀伊国名所図会』の流布本にも「根来椀」の項はあるのですが、内容がまったく違っていて、「根来塗」という語は出てこないのです。異本は流布本と同じく天保9年( 1838)の出版 だそうです から、「根来塗」の初出は、これまで考えられていたより、40年もさか...