2020年3月26日木曜日

荒井健・田口一郎『荻生徂徠全詩』4



今回は一聯の二句を、和歌のように仕立ててみました。もっとも、荒井さんがこういう駄洒落をお好みにならないことは、よく存じ上げているのですが……。

 人は言う素晴らしいのは春の川 月明かりなら何をか言わん
 花・花・花――咲いてる岸辺の林かな 桂生ゆ月波間に浮かぶ
 水面[みなも]には花と月とが揺れ動く 月影花の香清くさわやか
 疑った!初め美人の顔[かんばせ]の 髻[まげ]に挿す花映ったのかと
 また思う鏡見つめる美女嫦娥 誰かに恋する色っぽさかと
 微笑めばかすかに開く唇よ 媚態万化し水にただよう
 見るうちに江上の月昇りたり 満ちたる潮もすでに鎮もる

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