2020年2月15日土曜日

沈和年『水墨画の表現力を高めるために」3


 
沈さんは「恍惚シリーズ」に続いて「たまゆらシリーズ」を発表していらっしゃいます。それらを拝見すると、古くから中国で重視されてきた「線」よりも、日本人が大好きな墨の「面」――つまり墨のにじみやぼかしによる不定形の美しさが魅力になっているように感じられます。
30年以上日本にお住いの沈さんは、やはり日本の四季や風土からも大きな影響を受け、力強い墨の線よりも、墨の広がりがもつ微妙なニュアンスに、より一層惹かれるようになっていらっしゃるのではないでしょうか。

ところで、沈さんのすばらしい画技に改めて感を深くしたのは、数年前、NHKの「日曜美術館」で披露された指墨(画)を拝見したときでした。指墨(画)は指頭(画)ともいい、筆を使わず、手の指やたなごころ、あるいは爪に墨をつけて描く特殊な技法です。

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