2020年2月11日火曜日

静嘉堂文庫美術館「磁州窯と宋のやきもの」10


この場合も、日本化が行なわれました。たとえば、中国では吉祥長寿の象徴である「松」から、日本では「待つ」が思い出され、「恋人」や「恋」がイメージされるようになりました。「松」を「ソン」と発音する中国に、このようなシンボリズムがないことは、いうまでもありません。

「松」のような日本化があることはありますが、基本的には中国の吉祥性を受け継いでいるといってよいでしょう。江戸時代の画家がそれをよく理解し、それを思い浮かべながら絵筆を採ったことは、まず間違いありません。

かくして、磁州窯も江戸絵画も、その図像的吉祥性の淵源をたどっていけば、古代中国にまでさかのぼることになります。とくに唐朝五代絵画の影響力は、とても強いものがあったというのが私見です。つまり、磁州窯と江戸絵画は、まったく関係がないなどといえないことになります。

僕は次のような「マイベストテン」を選んで、両者に共通する吉祥性について口演したのですが、やはりいつものごとく、ちょっとコジツケ気味だったかな(!?) ちなみに、磁州窯作品の終りについているナンバーは、本展覧会の出品番号です。

0 件のコメント:

コメントを投稿

サントリー美術館「NEGORO」10

    これまで知られてきた『紀伊国名所図会』の流布本にも「根来椀」の項はあるのですが、内容がまったく違っていて、「根来塗」という語は出てこないのです。異本は流布本と同じく天保9年( 1838)の出版 だそうです から、「根来塗」の初出は、これまで考えられていたより、40年もさか...