2019年11月23日土曜日

絵画の表装ベストテン6



井並林太郎「佐竹本三十六歌仙絵 坂上是則」
(京都国立美術館『佐竹本三十六歌仙絵と王朝の美』2019)
佐竹本の中でもひときわ目を引く表具は、鹿の遊ぶ雪山を描いた室町時代制作と考えられる大和絵を、和歌に合せて選び改装したもの。『大正茶道記』大正九年四月十八日条には、高橋箒庵が応挙館の大師会でお披露目されたこの仕立てを見て、「恰も注文して画かせたるやうなる取合せの好事さ言語に絶し」と絶賛している。大胆な仕立てをほどこした本図の最初の所有者は益田英作(号・紅艶)。長男・孝、次男・克徳と少し年の離れた末弟である。



拙稿「現代の眼Ⅱ 近代数寄者に愛された画家たち1 藤原信実」(『茶の湯』431
大正九年(一九二〇)三月二十四日、益田孝(鈍翁)は品川御殿山の太郎庵で茶会を開いた。……有名な逸話がある。実際にくじを引くと、このプロジェクトの肝煎りである鈍翁には坊主が当たってしまったが、皆で相談の上、斎宮女御を引き当てた土橋永昌堂がこれを鈍翁に譲ることにした。それまで不機嫌であった鈍翁が、いっぺんにご満悦の体となったという。鈍翁は斎宮のために最高の着物を用意、いよいよご披露となったのが、この「斎宮女御茶会」であった。床に懸かる斎宮女御の表装はと見れば、纐纈印金を中回しに使った全体の調和に非の打ち所なく、高橋箒庵はそれについて絵の何倍も詳しく説明を加えている。

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