僕は「斎宮女御」が鈍翁のあと日野原家に移り、その後ずっとそこにあるものと信じ込んでいましたので、「今回は日野原さんも出し惜しみをしたんだなぁ」と思ったんです。しかし見終ってから、ミュージアムショップで大枚3000円と豪華カタログを交換し、巻末にある移動一覧表を見ると、早く日野原家を出たらしく、現在の所有者はただ(個人)となっていました。
もちろん前に見たことがあるので、おしゃべりトークでは「斎宮女御」も使うつもりですが、今回よく鑑賞することができた「坂上是則」を中心にしようと思ったことでした。
10年ほど前、茶の湯同好会の会誌『茶の湯』に、「近代数寄者に愛された画家たち」と題して、1年間エッセーを連載したことがあります。その第1回には、佐竹本「三十六歌仙絵」の筆者にアトリビュートされてきた「藤原信実」を選びました。もちろんこれは伝称に過ぎず、信じている研究者など一人もいないのですが、数寄者に愛されたことは事実です。というよりも、「画家たち」と銘打った以上、どうしても固有名詞を出す必要があったのです(笑)
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