この観点から強く興味を引く画家の一人として選ばれたのが岸田劉生である。ここではその代表作「切通しの写生」(東京国立近代美術館蔵)に焦点を絞ってみよう。黒田清輝が主導する白馬会の外光派的スタイルから出発した劉生は、やがて白樺派の影響を受けてフュウザン会を立ち上げたが、間もなく北方ルネッサンス様式の差し響きによって写実に傾き、草土社を結成した。「切通しの写生」は、大正五年(一九一六)、第二回草土社展に出品された作品、劉生の家に近い切り通しを描いて、劉生風景画の象徴的位置を占めることになった。今も小田急線参宮橋駅から西北へ五分ほど歩けば、「切通しの阪」と呼ばれている坂がある。
2019年10月9日水曜日
登録:
コメントの投稿 (Atom)
鎌倉国宝館「扇影衣香」4
目出度い雪が彼方まで 驚くほどに降り積もり 目出度い雲が天上の 果てまで暗く してる けど 地上はまるで満月の 夜かと疑う明るさで 山には白雲 棚引いて きらめく朝日を 浴び てる よう 舞うがごとくに降る雪は ひらひら 散って...
-
柳孝一さんが 1 月 17 日にお亡くなりになりました。享年 56 、あまりにも若すぎます。心からご逝去を悼むとともに、ご冥福を深くお祈り申し上げます。 柳孝一さんは日本を代表する慧眼の古美術商として、早くから美術業界でその名を知られてきました。いや、古美術ばかりでなく...
-
出光美術館・与謝蕪村筆「夜色楼台図」< 11 月 18 日まで>( 11 月 16 日) いま出光美術館では、江戸時代絵画の<雅>と<俗>に焦点をしぼって、「江戸絵画の文雅」< 12 月 16 日まで>と題するオススメの企画展が開催されています。これに錦上花を添え...
-
5 月 10 日(土)「高階秀爾先生に感謝を捧げる会」が帝国ホテル東京で開かれました。もちろん僕も出席させていただくことにしていましたが、ひどい風邪をひいてしまい――その風邪をこじらせてしまい、申し訳ないことながら出席することができませんでした。去年「饒舌館長ブログ」に「追...

0 件のコメント:
コメントを投稿