2019年10月10日木曜日

東京ステーションギャラリー「岸田劉生展」9


強い光線を浴びる赤茶けた道の割れ目や小石、路傍の雑草までを写実的に描きながら、写実的というより、むしろシュールレアリスムのような感覚を漂わせて、見るものを魅了する。我が国の何気ない風景を、精緻なる筆致で描き尽くそうとする。そこにはアルブレヒト・デューラーの銅版画を継承した跡が見出される。それを直接的に実証することはむずかしいが、デューラー的な視覚だといってもよいであろう。そもそもこれは、ヤン・ファン・エイクが発明したという西欧の油絵なのだ。

ところがここに、葛飾北斎の風景版画「くだんうしがふち」が突如登場するので、驚かれる方も多いだろう。

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