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2019年9月10日火曜日

諸橋轍次博士12



先生は卓越せる漢学者でしたが、近現代を代表する漢詩人でもあったと思います。先生には、米寿祝賀会記念の配り物とされた『止軒詩艸』(1970年)があります。狂言綺語を避けて平明な詩語を用い、素直に自然を見つめながら、しかも詩魂の清澄と凛とした韻律を響かせるところ、宋詩の趣に似ています。

先生の博士論文が宋代に焦点を絞っていた点を考えると、とても興味深いことだと思います。『止軒詩艸』から二首ばかりを、またまた僕の戯訳で紹介することにしましょう。

陽和洞を訪う(1947年 65歳)
 緑の竹が鬱蒼と 取り囲んでる陽和洞
 柴の扉をコツコツと たたけど主人はもういない
 静かな真昼 山の中 スモモの花に雨が降る
 枝から枝へと鶯が 鳴きつつ行く春 惜しんでる


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