2018年11月25日日曜日

鹿島美術財団講演会「グローバル時代の東西」3


東大寺南大門型金剛力士像の中世にさかのぼる遺品は、京都・万寿寺像や三重・府南寺像程度にすぎないとのことです。また、運慶一門は、歴史上著名な東寺南大門金剛力士像に、我が国で一般的な金剛力士像の型を採用した可能性が高いそうです。つまり、東大寺南大門金剛力士像型は、その後ほとんど継承されなかったのです。

これは実におもしろい事実だと思いました。根立さんは型に注目しましたが、様式的に見た場合も、東大寺南大門金剛力士像はきわめて特殊な像であるといってよいと思います。それは力強くエネルギーに満ち、きわめて合理的な造形によって支えられています。

一言でいって、益荒男的美意識そのものなのです。このような益荒男的美意識は、エレガントで優しく、たとえ若干不合理であったとしても、それを感情によって補いながら観賞する手弱女的美意識の対極に位置するものでした。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』12

  そのとき『君たちはどう生きるか』の対抗馬 (!?) として挙げたのは、色川武大の『うらおもて人生録』(新潮文庫)でした。京都美術工芸大学にいたとき、『京都新聞』から求められて、就職試験に臨む受験生にエールを送るべくエッセーを寄稿したのですが、本書から「九勝六敗を狙え」を引用し...