しかしその後、東京国立博物館の池田宏さんにお会いする機会があり、持論を開陳すると、「いや、河野さん、七宝を使った甲冑がありますよ。七宝は広い意味で陶磁ですよ」と教えてくれるではありませんか。「持論はついに証明されたのだ!!」と、こんなうれしいことはありませんでした。
フィレンツェのシュティッベルト美術館は、とても充実した武具美術館です。ここで西洋の甲冑をたくさん見ましたが、僕にはとても美しいとは感じられませんでした。機能的には大変すぐれているに違いないと理解できましたが、美的じゃないんです。人を殺したり、殺されたりするのを防ぐ武具に美を求めるなんて、やはり僕は日本人なんだなぁとちょっとおかしくなりながら、ギャラリーを回った日のことが、懐かしく思い出されるのです。
その後、こんなに美しい日本の甲冑が、『國華』にまったく紹介されていないことに気づいて、これはマズイと思いました。いや、古くは論文まであったんです。川崎千虎の「本邦武装沿革考」は、創刊号に始まり、延々75回にわたる長連載、しかも「補綴」3回というオマケまでついてようやく終わるという大論文でした。
しかしその後は皆無だったんです。そこで手始めに、先の池田さんにお願いして、厳島神社所蔵の「小桜黄返威鎧」という絶品――もちろん国宝――を紹介してもらったのでした。
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