先生によれば、その根幹をなす最も重要な三句があります。仏の智慧とは「さとりを求める心〔菩提心〕を原因とし、大いなるあわれみ〔大悲〕を根とし、手だて〔方便〕を究極的なものとするのである」と訳される三句です。
悟りとは悟りを求める心が大前提であり、そこに仏の慈悲が作用することによって達せられますが、最終目的は衆生救済のため活動である――ということになります。ここで重要なのは仏の大悲・慈悲であり、それはおのずと女性と結びつきます。
仏の慈悲を象徴する観音菩薩は本来男性ですが、やがて女性的イメージが強まったことを考えれば分かりやすいでしょう。そもそも「胎」とは身ごもることや子宮ですから、女性の表象なのです。母親の胎内に眠る胎児の仏性が開花するさまを描いたのが、胎蔵界曼荼羅であるという説さえあります。明らかにこれは陰と結びつきます。
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