2025年6月4日水曜日

東京国立博物館「蔦屋重三郎」15

中西進さんの『辞世のことば』<中公新書>には、有間皇子ありまのみこから飯田蛇笏いいだだこつまで、60人が遺した辞世が選ばれています。しかし「今はの際は寂しかりけり」みたいな悲観に満ちるものは本書に見つかりません。

やや近いのは、在原業平の「つひに行く道とはかねて聞しかど昨日今日とは思はざりしを」でしょうが、色恋と戯作の違いはありながら、自分の好む道をまっすぐに歩んだ点で、春町は業平に似ているような感じもします。それはともかく、春町の内向的性格がその肉体をさいなんだのではないでしょうか。

また春町の狂歌名は酒上不埒さけのうえのふらちといいました。これは明らかに酒仙あるいはアル中(!?)であったことを示していますが、やはり飲み過ぎも病気の一因だったのではないでしょうか。春町の享年は数えで46、人生50年の時代といっても若すぎますね。

 

0 件のコメント:

コメントを投稿

鎌倉国宝館「扇影衣香」6

 「僕の一点」は 建長寺所蔵の「釈迦三尊図」ですね。南宋仏画のゼッピンです。 じっと観ていると、一部に華麗な色彩を使いながらも、異民族に北半分を奪われてしまった南宋人の哀しみと愁いが胸に迫ってくるような色感です。 南宋絵画というと、馬遠・夏珪の水墨山水画や、禅宗水墨画がまず頭に浮...