2025年5月26日月曜日

東京国立博物館「蔦屋重三郎」6

 浜田先生は若干婉曲に表現していらっしゃいますが、小池正胤ほか編『江戸の戯作パロディー絵本3<変革期黄表紙集>』(社会思想社 1982年)の解題では、この揶揄寓意を真正面から肯定しています。

「鸚鵡返」という言葉には、その頃、盛んに書写されて読まれた定信の『鸚鵡言』(天明6年成立)の影が二重写しとなっており、「文武二道」には、定信の改革政治の一大モットーたる文武両道の積極的な奨励策を想起せざるを得ない。これを初めとして、本書中に描かれる場面の数々に、ほとんど落書といってよいほどの、痛烈な時事諷諫ふうかんの刃が仕組まれているのを見てとるのは、きわめて容易である。

 

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