「僕の一点」は、やはり初めにあげた狩野山楽の彩管になる「牡丹図」「紅白梅図」の襖絵ですね。この豪壮華麗なるエネルギーに満ちた画面構成、それにもかかわらずいささかも失われていない豊かな叙情的感情、二つの対立する美意識が完全に溶け合って一つの個性美へ昇華していく不思議に幻惑されるのです。
山楽の師永徳とその子光信が世代を超え、最強タッグを組んで創り出したような、金碧桃山障壁画の最高傑作を東京で堪能できる千載一遇の機会がやってきました。
50年にすぎないのに、いや、それゆえにこそ時代の活気が沸騰し、爆発を起した安土桃山時代という日本歴史上稀有な時代の魅力を、この狩野山楽による二つの障壁画が直感的に理解させてくれるのです。しかも興味深いのは、この画家を生み出した安土桃山時代が、逆にこの画家を翻弄し苦しめたというパラドックスです。
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