2010年、小林忠さんが館長をつとめる千葉市美術館で、館長みずから企画し開催した「田中一村 新たなる全貌」展が開かれました。僕にとって一村との初対面でした。その四半世紀ほど前、NHK教育テレビ「日曜美術館」で「黒潮の画家――異端の画家・田中一村」が放映され、私たちは初めて一村という画家の魅力を知ったのでした。
この番組にコメンテーターとして出演し、伊藤若冲にたとえて一村の稀有なる美的世界を熱く語った研究者こそ小林忠さんでした。小林さんは謙遜していますが、一村の発見者だといっても過言ではありません。
より直接的な一村との出会いは、千葉市美術館に「椿図屏風」が収められるときでした。千葉市美購入委員をつとめていた僕は、一村ファンに先んじてこの傑作をナマで観賞するチャンスに恵まれたんです。
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