2024年5月29日水曜日

世田谷美術館「民藝」14

 

当時は布や糸が極めて貴重であったので、晴れ着として作られたこぎん刺しの着物は、着古したら労働着へ下ろされ、擦り切れやすい袖や裾は付け替えられた。いま「身頃」と呼ばれるこぎん刺しに袖や裾がないのはそのためである。そして、刺しを施した身頃が弱くなれば、上からさらに刺し子を施して補強したが、これを「二重刺しこぎん」という。あるいは、身頃の白い木綿糸が切れてしまったら、全体に藍をかけて染め直したが、これを「染めこぎん」という。二重刺しこぎんや染めこぎんは、年配の女性が着たことから「あばこぎん」(「あば」は年配の女性のこと)とも呼ばれる。このように、津軽こぎん刺しの着物は何度も再生しながら襤褸ぼろになるまで着古されたのである。


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