2023年9月20日水曜日

サントリー美術館「虫めづる日本の人々」7

やまとうたと申しますものは、人の心を種にたとえますと、それから生じて口に出た無数の葉のようなものであります。この世に暮らしている人々は公私さまざまの事件にたえず応接しておりますので、その見たこと聞いたことに託して心に思っていることを言い表したものが歌であります。花間にさえずる鶯、清流に住む河鹿の声を聞いてください。自然の間に生を営むものにして、どれが歌を詠まないと申せましょうか。力ひとついれないで天地の神々の心を動かし、目に見えないあの世の人の霊魂を感激させ、男女の間に親密の度を加え、いかつい武人の心さえもなごやかにするのが歌なのであります。


 

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