2022年9月9日金曜日

与謝野晶子私論5

 

『みだれ髪』の輝きがあまりに強かったために、その後の晶子短歌に対する評価が低くなることはやむを得ないでしょう。日夏耿之介は「『みだれ髪』の浪漫的感覚」(『明治文学全集』51)において、この歌集を「30年代浪漫思潮正嫡の美の感覚至上的高揚」であったと褒めたたえつつ、次のように厳しい結論を下しています。

この天才の女詩人はその受けて生まれたる天与を夙はやく五月兎のような多産の間に消耗してそのかけらを後期に持ち伝えたにすぎなかった。すなわち、与謝野氏晶子女士は天才のなしくづしで終った惜しむべき天縦の逸才の一人であった。

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