2022年9月6日火曜日

与謝野晶子私論2

 

フランスで制作した「裸体婦人像」(現 静嘉堂文庫美術館蔵)を携えて帰国した黒田清輝は、この年秋に開かれた第6回白馬会展に、これを出陳しました。すると猥褻わいせつであるという非難が起こって、撤去すべしという意見さえありましたが、下半身の部分をあたかも腰巻きのごとくに布で隠して展示を続けるという妥協案に落ち着きました。

乱倫の書とさえ非難された『みだれ髪』の出版と腰巻き事件が、ともに明治34年であったというのは、とても象徴的であり、興味深いことだと思います。それだけではありません。前年の11月、鉄幹が主宰する文芸雑誌『明星』は、掲載した裸体画のために発禁処分を受けているんです。


0 件のコメント:

コメントを投稿

根津美術館「唐絵」8

   その山水はいわゆる辺角の景という構図になっています。画面の左上から右下に対角線を一本引いて、その左下に近景を描き、右上の余白に遠景を添えて遠近感を視覚化させています。 このような辺角の景は、中国・南宋時代の画院画家である馬遠や夏珪が好んで用いた構図法でした。ですから馬の...