11月中旬、京都・大原は紅葉の真っ盛りだった。その紅葉を眺めながら山道を登ると、丸太に「小松均墨絵教室」と札が下がっていた。丸太門を入ると家が何軒もあり、どれが氏の住まいか分からない。大声で呼ぶと数匹の犬に吠えられてしまった。まるで仙人屋敷のようだった。
やがて返事があり、奥の1軒に入った。小松氏は86歳、今夜は寒さが厳しいから教室で絵を描くという。夫人はあわてて石油ストーブに火をつけた。教室は広く、裸のマネキン人形、鳥の剥製などが置いてあり、壁には「敬慮」、「遠くの物は近くに見よ、近くのものは遠くに見よ、筆は剣より重し」、その隣に「マムシが出ます。出来れば長グツ持参」など、小松語録があちこちに貼ってあった。
富士山を描く氏は口から咥えタバコを切らさない。それが短くなって口唇がやけどするのではないかと思うところまで吸っている。そしてゼーゼーと息をしながら時おり咳きこむのであった。
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