2022年4月2日土曜日

月岡芳年「大日本名将鑑」12

 


一方、上流階級や開明的知識人たちの一部は、近代国家には正しい歴史画、つまり西欧的歴史画が必須であると考えていた節があります。しかしそれは、頭でっかちの理論、実態を伴わない理想であって、そんな歴史画はなかなか普及しませんでした。

明治22年(1889)岡倉天心は、今や世界最古の美術雑誌となった『國華』を創刊しました。天心は「それ、美術は国の精華なり」に始まる、四六駢儷体の堂々たる創刊の辞を寄せています。

それを読んでみると、日本美術においてもっとも発達が遅れているのは歴史画であるけれども、これは近代国家にとって絶対必要なものであることを力説しています。深読みをすれば、未発達であることに対する苛立ちさえうかがえます。

0 件のコメント:

コメントを投稿

出光美術館「復刻 開館記念展」2

本年は、皆様をこの展示室へお迎えする最後の 1 年となります。その幕開けを告げる本展は、 58 年前の開館記念展の出品作品と展示構成を意識しながら企画したものです。……開館記念展の会場を飾ったのは、仙厓( 1750 - 1837 )の書画、古唐津、中国の陶磁や青銅器、オリエントの...