2022年3月27日日曜日

月岡芳年「大日本名将鑑」6

一般的に、これらは西欧絵画の様式的摂取、あるいは影響といった美術史的観点から指摘されるところですが、それに止まるものではありませんでした。美術の問題を超えて、どうしても<近代>の表象が必要だったのです。

その意味で、第1図である「天照大神」の構図が高橋由一の「栗子山隧道」とよく似ていることは、とても興味深く感じられます。近代的科学技術を駆使して完成させるトンネルこそ、きわめて近代的な装置であり、近代のシンボルでもあったからです。

 もっとも、「栗子山隧道」は明治18年の作品ですが、西洞門を描いた作品は早く明治14年に完成していたのですから、「栗子山隧道」だけにこだわる必要はないでしょう。重要なのは、トンネルが近代の表象だったことです。「栗子山隧道」は芳年によって先取されているーーなんて言ったら言い過ぎかな? 

0 件のコメント:

コメントを投稿

出光美術館「トプカプ・出光競演展」2

  一方、出光美術館も中国・明時代を中心に、皇帝・宮廷用に焼かれた官窯作品や江戸時代に海外へ輸出された陶磁器を有しており、中にはトプカプ宮殿博物館の作品の類品も知られています。  日本とトルコ共和国が外交関係を樹立して 100 周年を迎えた本年、両国の友好を記念し、トプカプ宮...