2021年12月25日土曜日

根津美術館「鈴木其一・夏秋渓流図屛風」11

 

僕に漢文を教えてくださった竹谷長二郎先生と、ご友人の北野克先生が編集した『鈴木其一書状』<日本書誌学体系38>(青裳堂書店 1984年)は、141通の其一書状を翻刻したもので、其一研究のもっとも重要な資料の一つです。

其一の書状はすべて松沢石居あるいは金三郎に宛てて書かれたもので、二人は同一人と思われますが、なかに「大孫 御見世中様」宛てがあります。これは当主大坂屋孫八の通称ですので、松沢石居(金三郎)とは大坂屋孫八のことと見なして間違いないでしょう。現代まで150通近い書状が遺るほど、其一と大坂屋孫八の関係は深かったんです。

浅草寺本堂修復にも多額の寄進をしたにちがいない大坂屋孫八が、その記念として其一にこの「夏秋渓流図屏風」を描いてもらったのではないでしょうか。当然のことながら、其一にもリキが入ったことでしょう。残念ながら、其一の書状にこの屏風のことは出てこないようですが……。

0 件のコメント:

コメントを投稿

東京美術『日本視覚文化用語辞典』3

  前回、東京国立博物館の特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」を紹介しましたが、実をいうと後期高齢者の僕には「コンテンツ」の意味がよく飲み込めませんでした。しかしこの辞典にはチャンと「コンテンツ」という項目があって、簡にして要を得た説明がなされています。しかも「マーシ...