菱川宗理と真顔は親しかったらしく、ほかにも真顔の賛をもつ宗理画が報告されていますが、本図のバージョンに、柳亭種彦[りゅうていたねひこ]の詩賛を有する「美人愛狗図」(静嘉堂文庫美術館蔵)があります。これは明らかに『源氏物語』に登場する女三の宮の見立て絵になっています。この間「江戸のエナジー」展で見ていただいた方も少なくないことでしょう。
菱川宗理の美人画様式は北斎宗理ときわめてよく似ており、筆力も非常にすぐれていて、ほとんど区別がつかない場合があります。事実、かの楢崎宗重先生も、戦前出された名著『北斎論』では、この「娘に猿図」を葛飾北斎の作品とされているのです。
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