2021年11月27日土曜日

鹿島美術財団東京美術講演会10


  最後の方で岡戸さんは、日本初期文人画家の一人、柳沢淇園の随筆といわれる『雲萍雑志』から、「影法師問答の文」を引用しました。しかし、酒仙館長の心に『雲萍雑志』の名が深く刻まれているのは、何といっても「飲酒の十徳」のせいですね()

○飲酒の十徳 礼を正し、労をいとい、憂いをわすれ、鬱をひらき、気をめぐらし、病をさけ、毒を解[]し、人と親しみ、縁をむすび、人寿を延[]ぶ。

『雲萍雑志』は古くから柳沢淇園の著作ということになっており、森銑三先生の校訂を経て岩波文庫に収められています。しかし先生の解説を読むと、淇園の著作ではなく、江戸後期の雑学者・山崎美成が、筆者不詳の随筆に柳沢淇園の名を冠して出版した偽書、あるいは仮託の書であった可能性が高いとのことです。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』8

  渡辺浩さんの『日本思想史と現在』というタイトルはチョッと取つきにくいかもしれませんが、読み始めればそんなことはありません。先にあげた「国号考」の目から鱗、「 John Mountpaddy 先生はどこに」のユーモア、丸山真男先生のギョッとするような言葉「学問は野暮なものです」...