私は日本刀のカーブが、平仮名の美しいカーブと共鳴していることを、大変興味深く感じます。中国の直刀が漢字であるとすれば、日本刀は平仮名なのです。前者が益荒男[ますらお]ぶりであるとすれば、後者は手弱女[たおやめ]ぶりだといってもよいでしょう。
本来、刀は武士[もののふ]が身につける武具です。ですからこの特別展のサブタイトルも「もののふの心」となっているんです。そのほか律令官僚や公卿がつける場合もありましたが、いずれにせよ男性が身につけた武具を手弱女ぶりだというのは矛盾ですが、どうしても私にはそう感じられてしまうのです。
現代の手弱女たちが日本刀に興味をもち、それを愛するようになっている現象は、何と愉快なことでしょうか。それはともかく、日本美術を際立たせる美として「反り」があることは、近現代日本を代表する名建築家・谷口吉郎が早く指摘するとおりなのです。
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