2021年8月20日金曜日

サントリー美術館「ざわつく日本美術」14

祐信描くところの美人は湯文字(腰巻)の紐を結びながら、衝立の陶淵明と目と目を見交わしています。明らかに、祐信は陶淵明の「閑情の賦」第2段「裳裾ならなれるものなら帯になり……」からインスピレーションを得て、この「美人図」を着想したのです。中国の東晋と日本の江戸時代が微妙に共鳴しあう――文化・芸術というのは何とおもしろいものでしょうか。

しかも、紅い上着は衝立に掛けられていて、第1段「上着は宵に脱がれちゃう……」とダがブルイメージにもなっています。古代中国の話を、わが国の当世風俗に見立てて描いているわけですから、見立て絵だということになります。あるいは、このもとになった中国画があって、祐信が和美人に変えたのでしょうか。中国ではもっぱら春宮画、つまり春画の名手として人口に膾炙していた仇英あたりに、モデルがあったような気もしますが……。

 

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