2020年8月28日金曜日

諸橋晋六『不将不逆』3


 「不将不逆」はかの『荘子』にある言葉で、晋六氏はお父さんの轍次先生から教えてもらったにちがいありません。そこで先生の『中国古典名言事典』(講談社学術文庫)をひも解くと、『荘子』のところに、「将[おく]らず逆[むか]えず、応じて而して蔵[おさ]めず」とチャンと出てきて、晋六氏がお父さんを正しく引用していることが分かります。そのあとに続く轍次先生の解説も貴重ですから、これもそのまま掲げておくことにしましょう。
過ぎたことをなにかと悔やんだり、反面まだありもしないことを、いろいろとまえもって思い悩む。それはむだなことだ。ただ心をむなしくして、当面する問題に対処し、それが過ぎてしまえば、心の中はなにもなかったもとの状態にもどっているのがよい。

0 件のコメント:

コメントを投稿

根津美術館「唐絵」8

   その山水はいわゆる辺角の景という構図になっています。画面の左上から右下に対角線を一本引いて、その左下に近景を描き、右上の余白に遠景を添えて遠近感を視覚化させています。 このような辺角の景は、中国・南宋時代の画院画家である馬遠や夏珪が好んで用いた構図法でした。ですから馬の...