それでは『漢詩歳時記』から、中唐の詩人・殷尭藩の「端午の日」を、またまた僕の戯訳で紹介することにしましょう。殷尭藩?――たしかに有名詩人とはいえませんが、この七言律詩は、後期高齢者になった僕の心に深く染み入るものがあります。
若い時にはお節句に 華やぐ気分もわいたけど
歳とりゃ深い感慨が 生ずることを誰が知る
ヨモギの人形 門口に 飾る習慣 無視しつつ
菖蒲酒[しょうぶざけ]飲み世の平和 語り合いたいじっくりと
左右の鬢[びん]は真っ白に なって日ごとに目立ちだし
錦のようなザクロだけ 年々眼にも鮮やかに……
千年からみりゃ人生は 賢者も愚者も一瞬で
ほとんどの人忘れられ 名を残すのはわずかだけ
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