2020年3月21日土曜日

島尾新『水墨画入門』1


島尾新『水墨画入門』<岩波新書>2019

 畏友・島尾新さんが新著『水墨画入門』を贈ってくれました。あっという間に読了、腰巻にある「こんなにも豊かで、深く、そして愉しい水墨画の世界」が、よく腑に落ちたことでした。あっという間に読めたのは、島尾さんの軽快な語り口のゆえでしょう。

島尾さんは日本の筆墨文化を論じて、「流れるように詠まれる歌には、連綿体の仮名の流れが相応しい」と述べていますが、その和歌のごとく連綿体のごとく、島尾さんの文章は美しく流れていきます。簡潔な体言止めを所々に混ぜながら、島尾文体は完成の域に達しています。

第一章は、「水墨画を定義するのは難しい」と書き始められています。そこで島尾さんは、「エビアン」や「トンカツ」や「マーカー」、三無主義の僕が持っていないスマホまで引っ張ってきて、水墨画をぐっと身近なアートにしようとしています。

0 件のコメント:

コメントを投稿

東京美術『日本視覚文化用語辞典』3

  前回、東京国立博物館の特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」を紹介しましたが、実をいうと後期高齢者の僕には「コンテンツ」の意味がよく飲み込めませんでした。しかしこの辞典にはチャンと「コンテンツ」という項目があって、簡にして要を得た説明がなされています。しかも「マーシ...