2020年3月30日月曜日

荒井健・田口一郎『荻生徂徠全詩』8



もちろんお酒をたたえる詩もあります。最近ある人から「酒仙館長」なる尊称を奉られましたが、「忘憂」とはよく言ったもの、ストレスに弱い僕が、嫌いなはずはありません() この「饒舌館長」でも、お酒の話がかなりのパーセンテージを占めているのではないでしょうか。その「酒仙館長」として、徂徠の一首を紹介せずにはいられません。「五言律詩百二十四首」のうちの「秋夜友人宅にて酒に対す」を……。

  いずこも秋の寂寥感 目と目で語る致仕への情
  歌舞音曲はないけれど すいすい進む盃[さかずき]
  友はふるさと懐かしみ 深夜 月光 町に満つ
  草木枯れ落つこんな夜 雁の音聞くのは堪えがたく……

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根津美術館「唐絵」8

   その山水はいわゆる辺角の景という構図になっています。画面の左上から右下に対角線を一本引いて、その左下に近景を描き、右上の余白に遠景を添えて遠近感を視覚化させています。 このような辺角の景は、中国・南宋時代の画院画家である馬遠や夏珪が好んで用いた構図法でした。ですから馬の...