2019年9月15日日曜日

京都文化博物館「ニッポン×ビジュツ展」+饒舌館長口演3



もちろん、若冲は養源院の俵屋宗達筆「白象図杉戸」を見て知っていたことでしょう。また、若冲独自の奇想性や普賢菩薩とのコノテーションがあることを認めた上での話ですが、象の圧倒的巨大性に対する若冲の驚きが、文字通り画面からあふれ出ているように感じられて仕方ないのです。

しかも、この象が洋書の解禁をおこなった吉宗将軍の命によってもたらされたという点に、18世紀の実証主義的精神がうかがわれて、興味尽きないものがあります。

たしかに若冲はエキセントリックな画家ですが、たくさんの鶏を飼ってよく観察したというという、よく知られた逸話からも推定されるように、18世紀実証主義の子供――誤解を恐れずに言えばその鬼子でもあったのです。僕はそれを強調したうえで、つぎの曽我蕭白筆「蝦蟇仙人図」へと話を進めました。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』6

  一般的なくくりでは比較思想史ということになるのかもしれませんが、渡辺さんの思考方法は、もっと能動的です。所与のものを単純に比較するのではありません。例えば纏足を論じながら、話はコルセットへ向うのですが、そこにはある必然がチャンと用意されているんです。起承転結というか、展開のさ...