2019年7月28日日曜日

松浦武四郎8


私が松浦武四郎という偉大な存在をはじめて知ったのは、桑原武夫氏の『一日一言』(岩波文庫)においてである。毎日、その日の項を必ず読むという日課を、学生のころから続けてきた。二月六日の条に、「この日伊勢に生まれた探検家」として、次のごとく武四郎が登場する。

我、もと遊歴を好んで山川を跋渉して、いかなる険もいとわず、日に十六、七里、その甚だしきときには三十里にも向うことなり。しかるに粗食を常として、生来、美服を好まず。不毛の地に入るときは、日に二合の米を食して、その余は何にても生草生果の類、生魚、干魚等を多分に食し、身命堅剛……勢国を出でしより未だ一日も病にさわり候こともなく、一帖の薬を服することもなし。(自伝)

我死なば 焼くな 埋めな 新小田に 捨ててぞ秋の みのりをば見よ(辞世)

0 件のコメント:

コメントを投稿

東京美術『日本視覚文化用語辞典』3

  前回、東京国立博物館の特別展「蔦屋重三郎 コンテンツビジネスの風雲児」を紹介しましたが、実をいうと後期高齢者の僕には「コンテンツ」の意味がよく飲み込めませんでした。しかしこの辞典にはチャンと「コンテンツ」という項目があって、簡にして要を得た説明がなされています。しかも「マーシ...