2019年4月8日月曜日

小林古径が小倉遊亀へ4


凸版カレンダーの解説に、小倉和子さんが書いているとおり、画面の中心が少し右に寄ることになりましたが、あまりに出来映えがすぐれていたため、それさえも鋭敏なる古径の美的感覚とみなされ、古径筆を疑う研究者は誰一人いなかったのでしょう。

しかここで疑問が起こります。遊亀が「菜」を描いたのは1942年、105歳で亡くなったのは2000年です。いつ遠山コレクションに収まったのかは知りませんが、その間、遊亀は自分の作品が尊敬する古径の作品になっていることを知らなかったのでしょうか。知るチャンスに恵まれなかったのでしょうか。このあたりは小野さんに訊いてみなければ何ともいえないのですが……。

しかし、必ずや遊亀は知っていたんだと思います。知っていたけれども、黙っていたのではないでしょうか。

0 件のコメント:

コメントを投稿

渡辺浩『日本思想史と現在』7

しかし渡辺浩さんは、先行研究が指摘した二つの点について、高橋博巳さんの見解が示されていないことが、やや残念だとしています。その先行研究というのは、大森映子さんの『お家相続 大名家の苦闘』(角川選書)と島尾新さんの『水墨画入門』(岩波新書)です。 僕も読んだ『お家相続 大名家の苦闘...