『奇想の系譜』の10年ほど前に出版され、 教科書のように使われていた日本美術史の通史に『日本美術全史』(美術出版社) があります。あの懐かしい海老茶色の表紙を開いてみましょう。
すると又兵衛は江戸時代初頭に出たスケールの小さい異色画家の典型であり、山雪は桃山様式の固定化に陥って画致硬く、平板でうるおいを失った画家となっているのです。さすがに若沖は注目すべき画家と見なされていますが、
円山・四条派の終わりにちょっと顔を出すだけです。
蕭白に至っては、奇矯にすぎてこの時代の退廃的な一面を反映するものと斬って捨てられています。今や京都奇想派の双璧と称えられる蕭白がこの扱いです。芦雪の評価は低くありませんが、
円山応挙(1733~95)の弟子として 源崎(1747~97)や月僊(1741~1809)、渡辺南岳(1766~1823)と併記されるに止まっています。
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